おい5月!
おい5月コノヤロウ
あともう少しで6月じゃね?
もう半分過ぎてね?
あああああああ~(耳を塞ぐ)
今年終わるやつやん!
もう終わるやつやん!
はい
さてさてね
世間は金曜の夜
華金にございます
まだ僕がバーテンダーだった時の
小話でもしてみましょうかね
いえね決してネタが無いわけでは
ありませんよ?
金曜の夜
繁華街の夜はこれからという時
カウンターから見える顔は
いつも同じで
今日もより一層グラスを拭く手際は
増していく
簡単に過ぎ行く時間
けれど時々この店に
似つかわしくないゲストも
ちらほらやってくる事がある
酔っぱらってぶん殴られた事もあったし
酒をぶっかけられた事もあったな
この日の風変わりなゲストは
老人
それもとびっきりの紳士
品のいいハットに
ビシッと決めた黒のスーツに
蝶ネクタイ
決め手はステッキと来たもんだ。
彼はカウンターに座ると
メニューも見ずにそわそわとしていた
しばらく様子を見て話しかけると
彼はこう言った
今日はね
久しぶりに妻とデートなんだ
それで少し落ち着きが無い
すまないね
私の服装は変じゃなかろうか?
ちっとも。
そう答える
ビールも出さずに待った
しばらくすると
奥さんがやってきた
きっと
いつもとは違う格好をして
羽の付いた帽子に
白のドレスだろうか?
そこで二人そろってコロナを飲んだ
聞くといつも二人は
若い頃から
この店のこのカウンターで食事をして
帰っていったらしい
お互い元気な内に
もう一度あの店で…
見送る時にはすっかり緊張も解けて
仲良く手を繋いで帰っていった
とある老夫婦の話だ。
二人の背中に
理想の夫婦像を見た
カウンターの数だけドラマがある
そんな金曜日のお話
竜一